ハーラン・コーベン (Harlan Coben) 著
田口 俊樹 訳
小学館 出版
1995 年から始まったシリーズ作品の最新作です。巻末の解説によると、『看板シリーズの最新作だ。本国では 2024 年に刊行され』ていますが、『邦訳は第 7 作の「ウイニング・ラン」 (2000 年) で止まっており、間の 4 作が抜けている』そうです。わたしは、1990 年代はあまりミステリーを読んでいなかったので、シリーズ作品だと知らずに読み始めましたが、主人公の過去が適宜紹介されているので、支障なく読み進められました。それでも、主人公のマイロン・ポライターとその相棒ウィンザー (ウィン) ・ホーン・ロックウッド三世が若かったころ、ふたりを FBI の仕事に引きいれた PT という人物が登場したときは、その事件を知りたくなりました。
さらに、タイトルにある『二度推理する』場面が思った以上におもしろくて、このシリーズをもう少し読んでみたいという気になりました。ただ、1995 年だと、AI どころか、スマホもなかった時代なので、いろんな場面がもどかしく感じられるかもしれず、迷います。
フーダニット作品でもある本作には、犯人を追うマイロンと彼を手助けするウィンとは別の立場で語る短い章が複数回挿入されています。おもに犯罪を犯す場面で、犯罪の手口を知ることができるだけでなく、主人公よりも先に犯人の心理をある程度見られる構成になっています。不思議だったのは、その人称が二人称になっていた点です。最後の最後の謎解きでその理由が、それまでの人物描写と相まって腑に落ちました。
作品構成や犯人像が巧妙に作りあげられていて、小さな違和感、たとえば、FBI に寄せられた匿名の情報の目的はなにか、二度名前のあがる関係者がひとりだけだけいるのはなぜか、犯人側の視点で『前回、綿密な計画をたてたのにミスを犯した』と語られたミスとはなにか、といったことがすべて明かされる最後を読んだとき、多くの点が漏れなくつながった感覚を味わえました。
登場人物のキャラクター造形も巧みで、主人公と重層的に対立する関係性のなか、犯人が選んだ最後の選択にも納得できました。ただ、シリーズを第 1 作から読んでいたら、違った印象をもったかもしれません。シリーズを通して登場してきた人物の最新を知ったうえで、過去作を読んでみるのもおもしろいかもしれません。

