
星野 博美 著
文藝春秋 出版
ほのぼのとした表紙に誘われ、読みました。
最初の章立てとこの本に登場する猫の家系図 (説明書き) を見て、小説かと思ったのですが、エッセイです。読んだあとに知ったのですが、著者は、「転がる香港に苔は生えない」で第 32 回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したノンフィクション作家だそうです。
日常的なできごとをきっかけに考えたことが書かれているのですが、わたしの場合はそれは何になるかと疑問に思ったことがありました。
著者とそのきょうだいが大人になって両親の家を出る際に残していった子供時代の持ち物を家族で整理したときのことを書いた部分です。
著者によれば、捨てずに残すものを選ぶものさしは、1. 忘れたくないもの、2. 自分に都合のいいもの、3. あとあとまで幸福を追体験できるかだそうです。著者の父親は、大昔、おそらく 1970 年頃に酔狂で録音した、ある晩の家族の会話のカセットテープを、遺物を整理しながら大音量で聞き続けていたそうです。このテープ 1 本さえあれば、残りの余生を十分幸せに生きていけるようだと評しています。
わたしにとってのカセットテープは何になるのか、すぐには思い浮かびませんでした。年末に向けて、不用品を整理しつつ考えたいと思います。